お知らせ
当館きっての人気者。犬筥が約2年ぶりに登場です!
公開日:2022年9月13日(火)
お知らせ
会期 2022年9月13日(火)〜2022年12月4日(日)
西澤笛畝コレクションの「犬筥(いぬばこ)」は、当館きっての名品として、いろいろな媒体に紹介されてきました。
これも人形なの?
犬の置物じゃない?!
そんな印象をお持ちの方もいるかもしれません。 しかし、その姿をじっくり眺めていると、なんだか不思議な気持ちになりませんか。
胡粉に雲母(きら)が掃かれた艶やかなお顔。 豊かな黒髪で縁どられ、額には赤いリボンのような「水引」も描かれています。 胴体には松竹梅鶴亀など鮮やかな吉祥文様。
犬は魔除けの力を持ち、安産の象徴とされてきました。 そんな犬のフォルムでありつつ、お顔はまるで幼い子供のように表されています。
婚礼や出産の調度品として調えられ、一対で飾られるのも特徴です。 丈夫な張子製で、上下に開く筥(箱)になっています。箱の中には、女性の化粧筆や守り札が収められた例がありますが、何かを収納するための実用品ではなく、お守りとして産所や寝室に飾られたようです。
この犬筥には銀製杯一対が附属し、「白絵(しろえ)」※ が描かれた専用箱に収められています。 婚礼や出産などの人生儀礼を彩る、子孫繁栄のシンボルとされた存在であったことがわかります。
雛人形の段飾りに添える小さな犬筥は多く見られますが、大型の調度品としての犬筥は希少です。 そして本作は、尾張徳川家の菩提寺であった建中寺(愛知県名古屋市)伝来品とよく似ていることが指摘されており、格調の高さも感じられます。
資料保存の観点から、次回の公開は数年後となる予定です。この機会にどうぞご覧ください。
※ 白絵・・・主に出産にかかる調度に見られる白色や薄墨などで描かれた絵画。